「デザインで本当に稼げる?(下)」ブランド設立前に必読!デザイナーとしての起業家精神モデル

前回の記事「デザインで本当に稼げる?(上)ブランド設立前に必読!デザイナーとしての起業家精神モデル」ではデザインで起業するにあたっての起業家精神を説明してきました。今回は、実際にブランドを設立した2人の事例を見ていきたいと思います。

品品學堂 講座▲左から、HMMの共同創始者・Nigel氏、CHANZ STUDIOのブランドディレクター・李東陽氏

 

☞ 産業デザイン学部出身:HMMの経験談

HMMSource:HMM

HMMはもともと広告デザイン会社でしたが、2014年に正式に独立。日常で使いたくなるデザインをコンセプトに、人間味溢れるデザインに、熟練した技術、耐用性、素材選びにまでこだわっています。また、「人間と機械の相互作用」を理想とし、ブランド設立以来、多くの国際メディアに報道され、国内外で順調に売り上げを伸ばしています。


HMMの起業家精神

 1. 完璧は存在しない

「市場の試練に耐えられるコンセプト、大量生産で利益をあげられるデザインは、本当の宝だ」とNigel氏は語ります。デザイナーは、守りに入ることから市場のニーズに応えず独自の設計を行うことで失敗に繋がることも。

デザイン学部出身者は、時に完璧であることを追求するあまりに、最初から最高のモノを生み出したいと考えますが、開発段階で立ち往生することで、機会を逃してしまうことも。Nigel氏は、もっとも重要なことは「効率」だと言います。コンセプトが決まったら、急いで実際の商品設計にうつり、ユーザーテストを実施、フィードバックに基づいて機能、価格、材料、その他のアイテムのプロセスとコストを調整し、デザインコンセプトが実現可能なものかどうかを判断していきます。

2. 世界的に画期的なイノベーションはほとんどない

多くのデザイナーは画期的なイノベーションを考えようとしますが、実際には「前例のないコンセプト」はほとんど存在しません。あなたが新しい商品のアイデアを考えているときに、他の人がすでにそれを実行しているかもしれないのです。

「当時はすごいモノができたと思い、生産やパッケージングに多額のコストをかけたものも、実際には売れなかったことも」

HMM 尺筆HMM 定規

Nigelは、デザイナーが市場に革新をもたらしたいのであれば、ただ妄想をして非現実的なものを作りだすのではなく、既存の素材と機能をいかに組み合わせられるか、他に活用法はないのかを考えていく必要があると言います。

3. ブランド管理を学ぶより、「妥協」を学ぶこと

「私がデザインを勉強していたとき、教授は自分のデザインに妥協することはできないと言っていました。しかし、私が実際に社会に出てみると、時間内にいかに適したものがつくれるのか、その『バランス』が大事なことに気づいたのです」

HMM 金點設計獎 剪刀Golden Pin Design Awardを受賞したハサミ

HMMは、世界的なデザイン賞Golden Pin Design Awardを受賞したハサミを例にとって説明してくれました。当初、そのデザインはディテールまでこだわったものであり、製造プロセスも複雑なものだったのだとか。そのため工場に見積もりを依頼すると予算の3倍に。結局最終的には妥協をせざるを得なかったと言います。

「市場構造と矛盾しないようにしなければいけません」。市場はもちろん、デザイナーは消費者の一般的な習慣についても考えなければなりません。Nigel氏いわく「『消費者教育』にかかる費用は非常に高いんです。革新すぎて一般の人たちが慣れない機能を持つ商品をつくると、コミュニケーションに時間を取られてしまううえに、受け入れられない可能性だってあります。それよりも馴染みのある商品を市場に出したほうが可能性があるんです」

 
4. コスト計算は教えてもらえなかった

「商品のコストと、価格の計算方法は誰も教えてくれませんでした。自分のブランドを持ってはじめて、国際市場で戦えるコストなのかどうかを知ることができるのです」

コストは一緒でも、個人消費者に対する販売(to C)と、代理店やエージェンシーに対する販売(to B)を同じ価格に設定することはできません。商品を国際的に紹介するにあたって、仲介業者が増えるにつれ価格も上がっていきます。

一般の人たちは、「値段が高いのあれば誰も買わないのでは?」と思うかもしれませんが、値段が高すぎて売れない場合は、最終的に代理店やチャネルを見直す代わりに、クリエイター自身の製造工程やコストを見直し調整していく必要があります。

 

5. 依頼があったらすぐに取り掛かりますか?
 ー No、人材探しが重要です!

「以前はビジネスチャンスがあったらすぐに始めるべきだと思っていました。でも経営者である今は、利益を生み出すことが生存を握る鍵なんです」
Nigel氏は、顧客からの注文を受けるよりも、リーズナブルな価格でも本当に購入したいと考える消費者を見つけたいと考えるようになりました。

HMM 原子筆HMM ボールペン

HMMは当初30を超える販売店がありましたが、その後断片的な委託販売を取りやめ、個別開拓した大型顧客のみを残し主要なチャネルを7、8個に絞りました。それにより、パフォーマンスも大幅に上がりました。

 

☞経営学部出身:CHANZ STUDIOの体験談

匠子設計

CHANZ STUDIOは再生資材を使い、自然に共通した要素をデザインに用いています。彼らはデザインはデザインであるだけでなく、環境保護やサスティナビリティにも影響していると考えているのです。現在メインにしている商品には動物の形をしているものが多く、日用品やオフィス小物が揃っています。シンプルで繊細なデザインは住宅はもちろん、オフィススペースにも適したものになっています。

CHANZ STUDIOの起業家精神

1. 過去の仕事経験の積み重ねが、自分を形づくる

CHANZ STUDIOの東陽氏は、企業管理を学んだのちに、様々な経験をしながら徐々にデザインに興味を持つようになっていきました。

東陽氏の経歴:
・ジュエリー講師:主に中国大陸からのツアー客を担当。
・スタジオマーケティング:実際のマーケティング業務ではなく、毎日繰り返される管理タスクであったため、退職。
・ストームグラス販売:ストームグラスは周囲の温度によって変化するインテリアの一種。当時ストームグラスのニーズは高く、子どもたちでも作れるDIYアイテムとしても人気に。収益も上がっていたが、市場としては長く保たないと感じ販売を止める。これがきっかけでデザイン分野に足を踏み入れることなり、ビジネスチャンスを見つけるための鍵にもなった。

2 . ひとつのことに没頭する

デザイン学部出身でもない彼が、デザインに触れられたきっかけはなんだったのでしょうか?東陽氏によると「ストームグラスを販売しているときに、キャンドルのワークショップを受講し、そのときにモノづくりに没頭できることがわかったんです」

Source:匠子設計

デザインを専門に学んでこなかった人が、この分野で成功するための鍵は「積極性」です。東陽氏はキャンドル工場を探し、教室をやっているかどうかを訪ねました。当時、工場では教室を開いてはいませんでしたが、彼の積極的な態度を見て、一対一のレッスンを開催してくれるように。毎日台北から新竹まで通い、キャンドルの型作りを学びました。その後、様々な素材(セメントや樹脂など)で試すようになり、実験を通じて素材の特性についても学んでいったのです。

3.  市場がブランドに与える打撃

東陽:「『デザイン』とは、もともと工業デザインに由来し、『大量生産』のために生まれた業界。デザイナーとして、商品を生産すると決めれば、大量生産でなくてもうまくいくのではないかと考えました」そこからすぐに、協力してくれる工場を探し始めたのです。

匠子設計 大理石牙刷架大理石でつくられた歯ブラシホルダー

 

デザイン学部の卒業生と大きく違うのは、どのように市場がブランドに打撃を与えるかを東陽氏が理解していた点です。「商学を学んだ背景から、市場については知っていました。のちにデザインの世界に入ったときには、その教えに従い、市場のニーズに応じて変更していくようにしていきました。さらに、利益率やコストの制限、大量生産ができないといったポイントの代わりに新しい突破点を探し、市場と向き合ってきました」

 

4. 少ない人材でも大きなことができる

東陽:「チームは小さくても、誠実である限り、大きなことができる」。彼は自分が育ててきた人材を信じ、優秀なパートナーとなってくれることを期待しています。

品品學堂 講座

東陽氏は今、「みんなで収益を得る」という中小企業のコアビジネス手法を採用し、それぞれのメンバーが自分のスキルの向上に力を入れ、チーム全体を底上げしていくことを望んでいます。

 

まとめ:起業は結局良いものなのか?

どちらのブランドもまだ成長と実験的な段階にあり、絶対的な成功法はありません。双方の観点から、デザインをビジネスにするということ、継続的に学ぶことの大切さ、市場ニーズに合わせて妥協することは全てリンクしていることがわかります。

ただし、Nigel氏は「妥協とは諦めではない」と言います。デザイナーが創始者としてもバランスを取り、「良いデザイン」を主張できる限り「お金を稼ぐ」ということは本来の目的ではないのです。結局のところ、商品をデザインするということは人のためであり、人と市場を考えてデザインに反映させるということは当然のことなのでしょう。

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デザインは良いビジネスなのか?という本題に戻ると、有形のお金で測った場合、完成までに時間がかかるデザインは決して「良いビジネス」とは言い切ることができません。しかし、デザインの観点から言えば、デザイナーは優れたデザインを通じてユーザー体験をスムーズに、日常をさらに便利にしてくれることから、人生に様々な可能性を生み出してくれるのです。デザインは間違いなく、すべての人を「良く」してくれるビジネスです。


>>前編はこちらの記事でチェック!
「デザインで本当に稼げる?(上)」ブランド設立前に必読!デザイナーとしての起業家精神モデル

 

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原文:「用設計創業,真的能賺錢?(下)」設計本科系 vs. 非本科系現身說法。
翻訳:Ayumi

 

 

記事のカテゴリー:デザイナーズガイド

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