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何者でもない私だからこそできるクリエイター支援。海を超えて台湾で実現した芦田瑠衣さんの夢

Pinkoi はアジア最大級のデザイナーズマーケットです。日々の暮らしにも、特別な日の贈りものにも。優れたデザイナーによる、創造性ゆたかな商品をお楽しみいただけます!

早く行きたいなら一人で行け、遠くへ行きたいならみんなで行け

これはアフリカのことわざだそうです。

初めてこのフレーズを聞いた時に、なんてステキなんだろうと思いました。なぜなら私自身、世の中の様々なことが細分化された今、誰かと一緒に何かを成し遂げることが、少し難しくなっているように感じていたから。関わる人たちの知識や好みがあまりにバラバラで、まとめようとしてもうまくいかない…そんな経験が今年1年何度もありました。

やはり遠くにみんなで行くということは理想論であり、自分ひとりの力の範囲内でさくさくと進んでいくほうが楽かも。なんて思い始めていました。

 

そんな時に、偶然Twitterであるクラウドファンディングの募集ポストを目にしました。

なに?
クリエイターを12名集めて京都から台湾に来る?

台湾に移り住んで2年、少しもやもやしていた私の目はこの投稿に釘付けになりました。京都からこんなにたくさんのクリエイターを集めて台湾に来て、この人達はいったい何をしたいんだろう…。

 

考えても、自分の頭ではどうにもこうにも答えが出ない…。なら聞くしかないということで今回台湾の『Culture and Art Book Fair in Taipei』に参加したメンバーの代表者である芦田瑠衣さんと、芦田さんが在籍している学校(後で説明あります)の校長古賀鈴鳴さんにお話を聞いてきました。

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左:芦田さん、右:古賀さん

―こんにちは。今回のクリエイター遠征隊の代表を務められている芦田さん、そして出展者のみなさんは古賀さんが設立された『世界文庫アカデミー』の生徒さんなんですよね?

芦田:そうなんです。今回の出展したクリエイターたちとはみな『世界文庫アカデミー』で出会いました。 

古賀:『世界文庫アカデミー(以下セカアカ)』は今年1月に設立した学校です。今は100人位の生徒が、場づくりと、ものづくりを学んでいます。

ー世界文庫アカデミーとは、どんな学校なんですか?

古賀:誰しも何かを学びたいという気持ちは常に持っているんだけど、どうしても日本の「学校」という枠の中では面白いことができない。それに大人になっても学び続ける「場」が今の日本にはまだ少ないと感じていて、じゃあ自分でやろうと決めたんです。デザイナー、写真家、編集者など様々な分野で第一線で活躍している方を講師として招き、週に一度僕が経営している古本屋で授業を行っています。

古賀:今は「新しい働き方」というものを多くの人が求めている時代だと思っています。1つのキャリアだけで満足するのではなく「自分の好き」から派生したことに柔軟に取り組める、そしてそこからお金を稼ぐ生き方を主にセカアカでは学んで貰っています。(⇒学校の概要はこちらで見ていただけます。)

 

ー芦田さんは約1年間「新しい働きかた」をセカアカで学ばれていかがでしたか? 

芦田:もともとサラリーマンだったんですが「ものづくり」ということにずっとずっと憧れを持っていて。自分は何も作れないけど、アーティストと同じコミュニティーに入りたいとずっと思っていました。だから同じことを考えている、悩んでいる人たちと知り合えたことが何よりの財産ですね。そして、セカアカで学んだことを活かして、アーティストを紹介するフリーペーパーの制作を始めました。

ー新しい仲間とセカアカを通して知り合い、それからどのような流れで台湾のクリエイティブマーケット『Culture and Art Book Fair in Taipei(以下CABF)』に参加することが決まったのでしょうか?

芦田:最初にCABF主催者と友達の方と知り合ったんですね。そこでまずイベントの存在を知りました。そしてクラスの中で台湾好きのクリエイターが何名かいて、彼らがしきりに台湾のマーケットの状況が気になると言うのも耳にしていました。この流れから、無謀かもしれないけど、台湾にみんなで出店したら面白いんじゃないかと思い、古賀さんに相談したんです。

 

私、みんなを連れて台湾のイベントに出店したい

ー校長である古賀さんは芦田さんのアイディアを聞いてどう思われましたか?

古賀:台湾で「日本の文化やモノ」が人気が有ることは、自分が以前台湾でPOPアップショップを出したときにも感じていました。さらに日本でも台湾好きの人が増えているから、僕たちが出店することで面白い反応が起きるんじゃないかと思いました。それに何よりも大事なのは本人たちの「やりたい」という気持ちだから。僕から何かを言うことはありませんでしたね。

 

ー昨日から始まったCABFに出店してみて、台湾の人の反応はいかがでしたか?

芦田:私たちのメンバーのほとんどは中国語ができません。だからお客さんと話をして商品の詳細を伝えることが出来ないんですね。こんな状況下だからこそ、お客さんも自分の直感で商品を手に取ってくれるのがとても嬉しかったです。

ー言葉が通じないからこそ見れる素直な反応なのかもしれませんね。


セカアカに通うクリエイターの作品たち

 

芦田:またお客さんからは、こんなの見たことがない!というような反応を頂いたこともありました。自分たちでは何も感じない点でも、外国の方が見ると新鮮に感じてもらえたり…クリエイターにとっては貴重な体験だったと思います。

古賀:正直に言うと、セカアカの出店メンバーはみんな学びの最中。なので知名度はまだまだ低いんですね。しかも出店自体が初めてというメンバーがほとんど。

ー海外の出店が初めてということですか?

古賀:ははは。地元京都でもまだ出店したことがないメンバーもいますよ。初めて対面でお客さんにものを売るのが、海外!本当にスゴイよね(笑)。私もビビってます。

ー確かに日本をいきなり飛び越えちゃったあたり、スゴイです!でも初めての経験の中で苦労されたことも色々あったのでは? 

芦田:やはり人数が多いのでみんなの意見をまとめることに苦労しました。今回は12のブランドから8人のクリエイターがこのイベントに参加したんですね。さらに作っているものがみんなバラバラなんです。ゴージャスからミニマムスタイルまで、テイストもかなり幅広い。なのでこのメンバーをどうやってまとめて、そして台湾のお客さんに対して私たちのメッセージを、ひとつのまとまりとして伝えていくかということはかなり苦労しました。

 

ーでは芦田さんがセカアカブースで台湾のお客さんに一番アピールしたことは何ですか?

芦田:少しでも足を止めてもらうために、台湾でも知名度の高い『京都』から来たという点をアピールしました。でも、今回私たちの主な目的は「売る」ということではないんですね。まずは台湾という場所を知る、そしてお客さんからの反応を見るということを一番の重点事項としていました。

古賀マーケットイベントに参加するのに「売る」が目的ではないというところが、僕からするとぶっ飛んでいて面白いなと(笑)。しかもメンバーの中には海外出店以前に、初海外の人もいるからね。

ー私もてっきりこれだけのクリエイターさんが一丸となって台湾に来られたのは、きっとみなさん台湾通なんだろうなと思っていました。

ものづくりが本当に好きなメンバーたちで作り上げた小さなブース

古賀:この「売るためではない」ために来たメンバーですが、ちゃんと自分たちの目的は達成しているんです。

ー「売る」以外の目的ですか?

古賀:森本さんというまだ大学生のアーティストが今回の台湾遠征メンバーにいるんですね。ある台湾人のお客さんが彼女の絵を気に入ってZINEを購入しました。ここまではごく普通のよくある話なんですが、そのお客さんがどうしても作者の森本さんに会いたいと、その会場で席を外していた森本さんが戻ってくるのを2時間待っていたんです。

写真中央が森本さんの作品、おだやかな空気感が漂います

ーひと目惚れでZINEを購入、そして2時間!も自分を待っていてくれた…アーティストからすると涙がでるほど嬉しい出来事ですね。

古賀:本当に僕もこの出来事を目にしただけで、今回台湾まで来てよかったと思っています。

芦田:しかも彼女の場合はイベントに出店して自分の作品を販売するのは初めてだったんですね。それがいきなり台湾の人の心を奪うなんて、作り手ではない私までも感動しました。

ひとつひとつクリエイターの作品を紹介してもらいました

 

ーその他に台湾のお客さんを見て印象深かったことはありますか?

芦田:言葉が通じないことが分かっていても、なんとかコミュニケーションを取ろうとしてくれる姿から学ぶところが多いと思いました。例えば日本人なら海外の人相手に言葉が通じないと分かると、諦めてしまいがちじゃないですか。でも台湾の人は諦めない、伝えたい、話を聞きたいという熱意がとても強いです。

 

これからのお話

ー台湾で、いろんなことを体験された芦田さんとクリエイターのみなさん。これからの展望について何かお考えですか?例えば、更に違う国に進出するなど… 

芦田:すぐに違う国ということはまだ考えていないです。でも作り手でないそしてサラリーマンとして今まで働いてきた経験がある私だからこそできる、アーティストのキュレーションや広報活動は今後も続けていきたいと思います。

ー芦田さんの言葉は本当に心の中から出てきているというか…クラウドファンディングでも目標金額10万円に対して52万円の支援額を集められたのも、納得できるんです。

芦田:私が昔から「何者でもない」普通の人だけれどアーティストを支援したい、彼らと繋がりたいという気持ちを持っていました。そして今回クラウドファンディングを実施して感じたのが、世の中には私と同じような気持ちを潜在的に持っている人が多いのだということ。台湾という京都から遠い地に来られたのも、セカアカメンバーと支援してくださった方がいたからこそだと思っています。

 

最初はただの思いつき。

台湾で日本のカルチャーが盛り上がっているみたいだから、京都からみんなで出店できれば面白いかもね。

芦田さんの胸に宿った小さなアイディアは、まずはクラスメイトたちを巻き込み、そして世界文庫アカデミー校長の古賀さんを巻き込み、さらにクラウドファンディングを通して日本中の人を巻き込みました。

 

そしてここ台北。 

初めて台湾で自分の作品を販売するという体験をした出展者メンバーたち。

「お客さんが自分の作品を買ってくれることの喜びを知った」
「台湾のアーティストの作品に刺激を受けた」
「言葉を使わないコミュニケーションを知った」

とびきりの笑顔でみんなが来てよかったと言っていたのが本当に印象的でした。 終始ニコニコしている彼らのブースの前には、いつまでも途切れなく台湾のお客さんでにぎわっていました。

 

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<編集後記> 

海外に出店するって聞くと、

「おお、スゴイ。選ばれし人たちだ!」

なんてついつい思ってしまいます。しかし、今回芦田さんたちの取り組みを見て、たしかに1人では色んな準備や障害を乗り越えることは難しいかもしれません。でも、自分のアイディアを外に出して、沢山の人の力をちょっとずつ借りれば難しいことではないんだなと思いました。

台湾で働く編集者として、日本のクリエイターがアジア全域で活躍することを願っている者として、芦田さん、古賀さんそしてセカアカメンバーとの出会いは、「みんなで一緒に歩いていくこと」の素晴らしさを思い出すきっかけになりました。

@246_atehaka

こちらは『あてはか』というフリーペーパー。京都を中心とした『手仕事の素晴らしさ』を世間の人に広く知ってもらうために、芦田さんが創刊。毎号愛にあふれていて、紙面の上で作り手さんと優しい時間を過ごせるそんなリトルプレスです。 

芦田さんのフリーペーパーが入手できる場所は彼女のプロジェクト『あてはか』のHPで確認できます。また古賀さんが経営する『世界文庫』も京都を訪れた際にはぜひ立ち寄ってみてください。

テキスト:岸本洋子
写真:Nicholas

 

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