まだママではない女性にこそ知ってほしい。69歳のデザイナー松本久子さんの願い【bib-bab】

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ねぇ、ママになりたい?

20代後半から、毎年自分に問いかけてます。

ここ数年は特に、答えが出なくなってしまって。友人の子供を見るたび、あぁ子供を産むことはいいなぁって思う。だけど、自信がなくて…今の私がママになっていいのか…いつもはっきりとYESともNOとも言えずにいました。

・日に日に仕事が面白くなって、やめられない
・子供としっかり向き合う時間が取れるのか不安
・そもそも、不器用でいい加減な自分が、子育てをできるのか

あとは言語化できない「命を授かることが怖い」という感情。

友達の子供の小さな手を握りしめながら、少しだけもやもやして。



* * *

そんな時、あるデザイナーさんを知った。名前は松本久子さん。そして資料を見てびっくりしました。なんと60歳のときにデザイナーになり、69歳の今でもブランドを経営しているおばあちゃん。

彼女が作っているのは「赤ちゃん用のよだれかけ」。ブランドのショップページには、ほっぺがぱんぱんにふくらんだ赤ちゃんモデルたちがずらり。みんなオシャレなよだれかけを身に着けています。

あぁ、かわいい。

 

最初、松本さんにメールでインタビューすると決めたとき、60歳で起業そして69歳になられた今も現役でデザイナーとして活躍されているという経歴にスポットライトをあて、紹介できればいいなと思いました。

簡単なプロフィールを読んで、聞いてみたいと思ったことを質問にまとめメールで松本さん送りました。後日、それはそれは丁寧なお返事のメールをもらい、その後、本記事の構成は大きく変わってしまったのです。

 

おばあちゃんが起業、確かにすごい。でも、松本さんのお話を聞いて、このユニークな経歴の話は私の中から吹っ飛びました。

これは1人の女性の優しくて強い「願い」のお話。

 

読んで欲しい。まだママになることを決めきれない私と似たあなたに届けたい。

 

孫のためというよりは、お母さんのために作り始めた「よだれかけ」

ー 最初に、よだれかけ専門ショップ『bib-bab』を、どんなきっかけで始められたのか教えてください。

bib-babは「ママと赤ちゃんのお出かけシーンを応援する」というコンセプトで運営しています。お店を始める前から、今の若いお母さんたちは大変そうだなあ、応援したいなぁという気持ちをもっていました。四人の子育てを経験してきた人生の先輩として、孤立しがちな今のお母さんたちの少しでも助けになれたら、と思っていたのです。

 

ー よだれかけでお母さんを応援?

はい、最初は自分の孫のために「よだれかけ」を作りました。でもこの「よだれかけ」は自分の孫のためという一方で、その母親であるお嫁さんの負担を楽にしてあげたい! という思いを込めて作りました。

 

ー 「よだれかけ」でどうやってお母さんの負担を減らせるのでしょうか?

まだしっかり口を閉じることが出来ない赤ちゃんは、いつもよだれが流れ出てきます。だから服や周囲のものを汚さないように、よだれかけが必要なんです。自分で作ってみようと思ったきっかけは、お嫁さんの「赤ちゃんってオシャレをさせても結局よだれかけで隠れちゃうんですよね。オシャレなよだれかけがあったらいいのに」という一言でした。

そこで

1)吸水性が抜群=取り替えの手間を減らせる
2)耐久性に優れている=手洗いでなく、洗濯機が使える
3)オシャレ=よだれかけでもっと赤ちゃんが可愛くなる

こんな「よだれかけ」を作ってみようと決めたんです。

スタッフと談笑される松本さんスタッフと談笑される松本さん

 

家族みんなで力を合わせたからこそ、60歳で起業できたんです

ー 作ろうと決めてから、松本さん理想の「よだれかけ」はすぐに完成しましたか?

納得できる生地、形、デザインに辿り着くまで1年近くかかりました。そしてこの期間中に試作品を子育て世代だった4人の子供たちにも使ってもらい、意見や改善案をもらったり。1年という長い間「よだれかけ」にひたすら向き合ってみて、周りに私の商品を必要としている人がたくさんいると確信をしました。そして60歳の時に、起業を決意したんです。

 

ー 起業を決意した後、まず何からはじめましたか?

最初はお金も場所も何もなかったので、まずは他所のお店に委託で置いてもらうことを考えました。それと同時に、長男夫婦はネットに強く知識があったので、自力でネットショップを作ってくれました。

また、私には他にあと3人のこどもがいるのですが、国語の得意な長女が商品紹介の文章を考え、アイデアマンの次男が改善案を出し、営業の得意な三男が委託先の開拓に走り、とそれぞれ協力してくれました。

松本さん、お嫁さんとパソコン画面の中には長女さん

加えて、次男のお嫁さんは、初孫のママとしてよだれかけの使い勝手についてフィードバックをくれ、三男のお嫁さんがbib-babというブランド名を考えてくれました。こうして家族みんなの応援を得て、60歳の何も知らなかったおばあちゃんが、起業することができたんです。

ー 家族みんなで得意なことを持ち寄って、お店を作っていく…、楽しそうですね!

ー よだれかけ作りの中で、松本さんがこだわっている点は何でしょうか?

デザイン・機能性・品質の3つを満たす商品であるように心がけています。

デザインは、よだれかけそのものが目立つのではなく、着けているあかちゃんがより魅力的に見えるように、シンプルで美しいものを作るようにしています。また、吸水性と耐久性が上がるように生地を何枚も重ねています。ネクタイとチーフを着脱可能にして、フォーマルにもカジュアルにも使えるようにしたり、とママに喜ばれるアイテムであるように心がけています。

そして、私たちの商品は出産祝い品としても使われることが多いため、しっかりした縫製であること、安全な素材を使っていること等、検品にも力をいれています。

水玉紺蝶ネクタイ

 

松本さんが私たち世代の女性に伝えたいこと… 

ー 赤ちゃんのための商品ではありますが、松本さんの視点の先にはいつも「お母さん」がいますね。

bib-babを経営していて、一番嬉しいのがお母さんから感謝の言葉をもらうことです。

可愛いよだれかけを着けている我が子の姿に癒される
街中で「かわいいね」と声をかけられて育児の辛さが和らいだ

こんな言葉を頂くたびに、やってよかったなぁと本当に思うんです。

 

ー 松本さんが、ここまでお母さんに寄り添うブランド作りをしているのはなぜでしょうか?

全体的に、昔に比べて子育て環境は厳しくなったと思います。

なぜなら、家事の多くは機械化しましたが、子育ては機械ではできないもの。多くの人の関わりが必要なのに、今は赤ちゃん一人に関われる大人の数が減っており、その分お母さんの負担が増えていると思います。

でも、昔も今も、環境は変わっても赤ちゃんに変わりはないはず。子育ての方法は違うかもしれませんが、子どもを育てる上で大事なことは大きくは変わらないと思っています。私もおばあちゃん世代ですので、今のお母さん方の子育て方法を学ぶ立場ではありますが、一言だけお伝えさせていただけるとしたら、こどもは親が思う以上にしっかり育つので大丈夫だよということです。

 

ー 私はまだ未婚で子供もいません。でも、毎日忙しく仕事をしている中で、なかなか自分が子供を育てるというイメージを持てずにここまで来ました。

そうですね。不安になられる気持ち、とてもよく分かりますよ。今のお母さんたちを見ていると、家事に育児に仕事に、十分頑張っているのに、世間からはもっと頑張れと言われているよう。そしてお母さんたち自身も、もっともっと頑張らなきゃと自分に課して苦しんでいるように私には思えるのです。

 

ー そうなんです。子育てをするなら、今の自分じゃ足りないという気持ちをついつい持ってしまいがちです。

ひとりで頑張っているお母さん方に、そんなに頑張ろうと思わなくてもいい、こどもはお母さんが大好きで、ちゃんと育つよということを伝えたいです。だからあなたも心配しないで。

 

ー 最後に、松本さんから女性という枠を超えて、私たちの世代に伝えたいことはありますか?

自分自身をデザイナーや起業家と言うと、何かおこがましい気持ちがします。でも、69歳のおばあちゃんから若い方へということであれば、以下の言葉を贈りたいと思います。

やってみたいというエネルギーがあるならば、ぜひそれを貫いてください。正解は前もって用意されているのではなく、自分の道を貫けば、それが正解になっていくのです。応援しています。

 

***

原稿を書きながら、思わず目頭が熱くなってしまいました。

今まで子供を持つことをためらっていた理由、自分の中でくすぶっていた何かが、松本さんとお話したことで溢れ出てきたから。インターネットが普及して、比べることが容易になった今、「標準」を求めてしまい、苦しくなってしまっている人も多いのではないでしょうか。

子育てをしているママ、そして私みたいにまだ迷っている人に、松本さんの優しくて力強い言葉が届いてほしい。

そして自分の赤ちゃんには、いつかbib-babのよだれかけをつけてあげたいな。

いつになるのかは分からないけど。

リバティハートリボンのよだれかけ

テキスト:岸本洋子
写真:bib-babさま提供

 

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記事のカテゴリー:インタビュー

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