【インタビュー】北海道の木から自分だけのスプーンを作ろうーKi-Ita

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北海道、旭川のインテリアセレクトショップ「プラン・ド・ハウス」は、「シロロデザインスタジオ」のデザイナー近藤俊介さんと一緒に、木のスプーンを自分で作るための小さな木材キット・Ki-Itaシリーズをオリジナル商品として製造・販売しています。このキットは、北海道産のカバ材から、自分だけの木のスプーンを手軽に作ってもらうために、つくり方の説明書や紙やすり、仕上げの為に使用する生のくるみがセットになっています。

Pinkoi Japanの事業開発担当者 デービットが家具・木工製造のメッカである旭川に飛び、プラン・ド・ハウスのショップマネージャー東海林 知里さんと、シロロデザインスタジオのデザイナー近藤俊介さんから、Ki-Itaが生まれた背景にあるストーリーを伺ってきました。


プラン・ド・ハウスの東海林さん


プラン・ド・ハウスについて簡単に教えていただけますか?

プラン・ド・ハウス は旭川にあるセレクトショップで、国内外の家具やインテリア小物、作家さんによるクラフト製品などを販売しています。この店舗はオーダー家具製作と空間デザインに特化したデザイン会社、エフ・ドライブデザインによって運営されています。エフ・ドライブデザインの主なクライアントは道内のホテルや店舗、時には個人のお客様の家の造作家具やリノベーションなども行っています。


旭川に店舗を構えるプラン・ド・ハウス。北海道のクラフトから国外のインテリアまで、幅広いデザインプロダクトが揃います。


ーKi-Itaシリーズは、どのようなきっかけで生まれたのでしょうか?

プラン・ド・ハウスでは、セレクト商品の販売だけではなく、木製品を中心に、ノベルティやオリジナルグッズ・小物のオーダー製作も行っています。Ki-Itaは、2017年の9月に、とあるショップのオープニングのノベルティギフトとして、数千本のオーダーをうけて製作したのがきっかけでした。当初は、納期とコストの制約もあり、私たちは、短期間で同じ形を大量に作れるように、木材を削る加工を数値制御できる「NC」という機械で生産する必要がありました。


NCマシーンから切り出した状態の木のスプーン。途中まで出来上がったこの板から、カラトリーを完成させるまでの体験がセットになることが、Ki-Itaの特徴です。


このノベルティアイテムが大変好評で、このキットをプラン・ド・ハウスのオリジナル製品として商品化する事にしました。しかし、このまま商品化するのではなく、私達がデザインする意義を再定義する必要がありました。「プラスチックやスチールではなく、木である理由はなにか?」「北海道で、旭川でキットを作る意義は?」「他の職人たちが作った木のスプーンと何が違うのか?」を考え、話し合いながら商品開発を進めました。


近藤俊介さん。家具デザイナー、シロロデザインスタジオ代表

 
ーKi-Itaのプロジェクトのビジョンは、どのようなものだったのでしょうか。

Ki-Itaの商品開発で目指したことは、出来上がった完璧なスプーンを作ることではなく、「人々の木の製品への理解と関係をどのように深めていくか」という課題への挑戦でした。旭川は木々に囲まれた、歴史的にも優れた木工技術をもつ家具産業の地でもあります。そのため旭川のメーカーは良質な木を使ってものづくりをすることが当たり前になっているのですが、木に触れ合う機会の少ない別の地域の人々にとっては、それは当たり前のことではありません。


オリジナル製品、Ki- itaシリーズの1つ、木のスプーンとケース。「これはなんだろう?」と蓋を開けると、この箱自体が、ひとつの板から削り出されたスプーンであることが分かります。


初めて家具を選び、いずれ買い替えることも考慮して購入した家具を、「エントリーファニチャー」と呼ぶことがあります。Ki-Itaは、木製の家具を購入する前に、木のことをよく知ってもらうための「エントリーウッド」として、人々が木と旭川について知る入口になって欲しいと思っています。そのため、Ki-Itaには、家具に使われる丈夫で良質な北海道産の木材を使用しつつも、気軽に買ってもらえるような価格に抑えています。特に若い人に、自分の手でスプーンを形作る過程を通して、木材や、木製品への理解を深めてほしい。そしてゆくゆくは、旭川で生み出された木の家具を選んでもらいたいという想いが込められてます。


木のこどもスプーンとフレーム
子供向けのフォークとスプーンのキットが欲しいというお客さんの声から作られた、Ki-Itaシリーズの最新作。使われなくなったカラトリーもしまっておくのではなく、”記念品”として側に置いておくことが出来ます。

 




ーここでのデザインの役割とは何でしょうか?

木のスプーンに付加価値を付ける為にデザインするのではなく、この木のスプーンそのものが”新たな価値”を生み出すにはどうすればよいかを考えてデザインしました。Ki-Itaの場合、その”価値”は手にする人によって異なります。ある人には、自分にとって完璧な形のスプーンを作ることかもしれないし、またある人には、大切な人とスプーンを作る時間そのものかもしれない。Ki-Itaの”価値”は、つくる過程で、誰かにとって特別な何かになっていくという、木への興味とものへの愛着を生み出すことだと思っています。
 


Ki-Itaのネーミングには、2つのデザイン事務所の想いがつまっています。北海道、旭川から生まれている「北から」(Kita-kara)、木が製品になって手に届くまでの「木→板」(Ki→Ita)...等など。



ー今後ブランドが企画していることはありますか??

私たちの目標は、Ki-Itaを通じて、人々に木でできたものへの興味と愛着を育んでいくことですが、ゆくゆくは、手仕事や職人にスポットを当てた商品をデザインしたいと思っています。2018年、私たちは36人のデザイナーや木工職人たちに、Ki-Itaの木のスプーンを預け、「自由に削って欲しい。」とお願いしました。


2018年の旭川デザインウィーク(ADW)で開催された、「プロが削る木のスプーン達」。2019年6月のADWでも、再び企画展が行われます!要チェック。


彼らが削り出してくれた木のスプーンは、同じ原型からカタチ作られているけれども、同じものがふたつとない、それぞれのアイデアや技術によって、1本のスプーンに無限の可能性があることを感じさせる、オリジナリティ溢れるものばかりでした。この経験もあり、次のステップでは木材だけでなく、木工のプロが加工するための道具もセットにして、一般の方にも職人の生み出したスプーンを再現出来るようなキットを作りたいと思っています。キットを通じて、旭川の優れた木工の技術と職人の存在が、世界に広く知れ渡ることを願っています。






Ki-itaのスプーンは、ナイフで簡単に削ることが出来ました。始めるとハマってしまい、30分でも1時間でも、没頭して削っていられます。


くるみを砕いて出た自然の油をスプーンを仕上げるコーティングの行程も、新鮮で面白い作業でした!



この記事は、 HOKKAIDO TO GOとの協働企画です。HOKKAIDO TO GOとは、北海道の新しい魅力、そして”今”地域で起きている面白い人々やものやこととの出会いを通して生まれている文化を発見し、掘り返し、共有する、というプロジェクトです。


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記事のカテゴリー:インタビュー

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