《圏外編集》の著者であり、伝説的な編集者である都築響一氏は、かつてこう語りました。「誰も行ったことのない場所へ行くなら、計画なんて立てられないし、状況を予見することもできない。だからこそ、見たことのないものに出会える。僕が歩んでいるのは、誰の模倣でもない旅なのだ」。その記事のタイトルは、「知らないからこそ、できる」でした。
その旅路も、ついに第50号という節目を迎えました。創刊前夜、編集チームがリビングに集まり、紙とペンを手に『秋刀魚』でやりたい50のトピックを書き出した日のことを覚えています。紅白歌合戦、昭和史、ラーメン魂、主婦の知恵……。日本への憧れが詰まったそのリストを、ある時は実現し、ある時は無謀な空想として削ぎ落としながら歩んできました。それは地図を頼りに進むというより、まるで「雑誌の神様」に導かれ、10年かけてようやく対岸に辿り着いたような感覚です。
『秋刀魚』は、少しわがままな雑誌です。話題すぎるテーマは扱わず、主流すぎる観点は語らず、多くの人が読みたがる最大公約数的な内容はあえて避ける。雑誌販売の「黄金法則」に逆行するようなこの性格ゆえに、50冊の中で一度も特集が重複したことはありません。市場で花火のような派手な音を鳴らすことはなくても、日本文化を愛する人々の本棚で、長く大切にされる一冊であり続けてきました。私たちが語りたいのは、一過性のブームではなく、人生のどこかで心に深く刻まれた「熱狂」と「愛慕」です。
「偏愛」こそが、私たちが日本文化の中に見出した魔法の言葉です。過剰なまでに惹かれ、すべてを知ろうとする過程で、それはやがて自分自身の形を作っていきます。道教的な「侘び寂び」は日本の精神の中で解放され、アメリカのジャズは日本の音楽シーンで新たな魂を見出し、アメカジは日本のストリートで世界を変える着こなしへと昇華されました。もし第50号で「日本精神」を語るなら、その総和は、さりげなく、それでいて奥深い「着こなし(穿搭)」に行き着くのかもしれません。それは単なるファッションアイコンではなく、家を出る前に自分が投影する「心地よい自分」の姿。こだわり、音楽の嗜好、趣味……それらすべてを包み込む魔法のような象徴です。
「着こなしといえば、あの人だ」。そう強く願い、1年以上の交渉を経て、最高のタイミングで俳優・歌手の菅田将暉さんの撮影が実現しました。私服と衣装の記録を綴った一冊『着服史』には、表現者であり服愛好家でもある彼の美学が詰まっています。菅田将暉という存在は、演技も音楽もどこか「型破り」でありながら、確固たるスタイルを確立しています。彼の「着こなしの履歴」を紐解くうちに、彼が世界と共鳴する方法は、自分の愛するものを真摯に分かち合い、それを服に、演技の喜怒哀楽に、音楽の歌詞に溶け込ませることなのだと気づかされます。彼は単なる「売れっ子アイドル」ではなく、体温を持ったひとりの「アーティスト」なのです。
これこそが『秋刀魚』の在り方かもしれません。ファッション特集でありながら、日本文化を牽引するバイヤーやブランドディレクターに、あえて「温かみのある日常の服」について語ってもらう。ファッションの行き着く先は、内側から湧き出る力であり、物語を語る手法であり、70歳になっても「かっこいい自分」でいられる服を見つけ、自在に生きることなのです。
「Behind the scenes(舞台裏)」は、制作現場において最も尊い瞬間です。これまで一度もスターを表紙に起用してこなかった私たちが、誰かに迎合するためではなく、このテーマに「最もふさわしい人」として彼を迎えました。表参道のスタジオ。菅田将暉さんは、前夜にこの「古着特集」のために準備してくれたスーツケースを開けました。自宅から持参した私服、愛用のアンティークウォッチ、そして台湾のチームと共に創り上げようという情熱。その心意気こそが、50号を迎えた編集部から、自分たちへ、そして読者の皆さんへの贈り物です。
これからの50号も、私たちは変わらず、この道を歩み続けます。
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