史博常玉 菊 シルクスカーフ

国立歴史博物館所蔵の「菊」（所蔵番号:26893）は、常玉（Sanyu、1901-1966）の作品の一つです。梅、蘭、竹、菊は一般に四君子と呼ばれ、高潔な人格を表す象徴とされています。常玉の絵画では、菊が頻繁に登場するテーマであり、これは中国の深い人文的な感情に基づいていると同時に、故郷への郷愁の表れでもあったのでしょう。この作品は、中国の気節を象徴する菊と鹿の角のような枝幹を描いています。象徴的な意味を持つ深紅は、中国の祝祭において最も重要な色彩であり、フランスのフォーヴィスムにおける色彩の自由で強烈な表現でもあります。赤い背景に金色の豊かな鉢植えの菊が配され、周囲には蝶やトンボが舞い、装飾的な役割を果たすだけでなく、画面に生命力を与え、生命の息吹と喜びの雰囲気を醸し出しています。これは常玉の作品では珍しい光景です。常玉は中国四川省順慶（1935年に南充と改名）に生まれ、幼い頃から故郷で父親に絵を学び、その後書家の趙熙（1867-1948）に書を師事しました。1921年には「勤工倹学」計画によりパリへ渡り、初期のフランス留学で芸術創作を学んだ中国人画家の一人です。彼の作品は中国と西洋の芸術的特徴を融合させ、簡潔で力強い線、造形、輪郭を用いて独自のスタイルを表現しています。絵画の造形は簡素で色彩は単一であり、裸婦、植物花卉、動物のいる風景が彼の三大創作テーマです。