Pàng-to̍k 放毒 • 台湾語小説集
世界中に広がる生物兵器攻撃、島中に蔓延するデマと嘘。
赤い闇、自由を迫害する「毒」から、どう身を守るのか?
電機メーカー出身の台湾語作家、杜信龍(Tō͘ Sìn-liông)。10年近くにわたる言葉の蓄積を通じて、純正な台湾語を探求し、地域の生活経験、言語と文化の奥深さ、母語と歴史への惜しみない愛情、そして社会時事や政治現実への関心と憤慨を、軽快なリズムと明晰な論理を持つ短編小説へと昇華させました。彼の作品は常に、科学的訓練に裏打ちされた理性的な推論と思考過程を披露しています。一方では、人間の営みや世の中への深い理解を求める物語を冷静な筆致で綴り、もう一方では、植民地時代の権威主義から未だ抜けきれない権力や不正へと鋭く切り込みます。
本書には、短編と掌編小説が合計12編収録されています。台湾が外部で直面する中国共産党との大きな危機を描いたもの、内部における台湾の歴史と政治が絡み合う「移行期の正義」の葛藤、そして人間性、愛情、医療関係を繊細かつ綿密に描写・探求した作品も。表題作である「放毒」は、武漢肺炎のパンデミックをテーマに、中国共産党の勢力が台湾に浸透し、女性を利用してパイロットを誘惑、空軍にウイルスを侵入させ、軍事機密を盗もうとする国防危機を描いています。「審判」と「San-kha-á」は、白色テロの犠牲者、政治犯の子孫、そして加害者の間にどのような正義が必要なのかを探求します。「PP基因新突變(PP遺伝子新変異)」、「走票(票売り)」、「紅包lok仔(紅包強奪)」では、政治家の思惑や選挙文化への鋭い観察と風刺が込められています。いずれも物語は緊迫感に富み、力強い結末を迎えます。
◎本書は伝統的な白話字を使用し、漢字とローマ字の表記は「台文通訊BONG報」を参考にしています。
◎本作品は国家文化芸術基金会の出版助成を受賞しました。
推薦の言葉
蔣為文(ジャン・ウェイウェン)| 国立成功大学台湾文学科教授
Tēng-pang Suyaka Chiu(周定邦)| 台湾語作家、台湾語歌謡と恒春民謡の継承者
Lîm Jū-khái(林裕凱)| 台湾文学科助教授、台湾語詩人、歌仔冊作家
著者紹介
杜信龍(Tō͘ Sìn-liông)
1981年台南湾裡生まれ。2006年国立中央大学電機工学大学院修士課程修了。現在は外資系企業に勤務。正式な台湾語教育や文学訓練は受けていない。2013年6月、台北から故郷の府城に戻った際、姉たちが皆中国語を話すため、台湾語しか話せない母親が疎外されていることに気づく。これを機に、自ら台湾語の学習を始め、台湾語話者(台湾語文学会)との交流を深め、台湾語の書籍を読むことで、台湾語を取り戻そうと決意。将来は台湾語文学と台湾語の地位向上のために尽力し、母語の尊厳を追求することを願っている。
目次
推薦序|台湾語文学の守護者/蔣為文
推薦序|心の底から湧き上がる美しさ/Tēng-pang Suyaka Chiu
推薦序|親子の絆を結ぶ台湾語話者へ/Lîm Jū-khái
自序|枷を背負って/杜信龍
放毒
同僚の女性との秘密
アージョンとアーイー
審判
情の刃
天星渓河
アフェン
アーラム
San-kha-á
PP遺伝子新変異
票売り
紅包強奪
作品執筆・発表記録
ISBN:9786267325131
出版社:前衛
仕様:ソフトカバー / 208ページ / 15 x 21 x 1.04 cm / 一般向け / 単色印刷 / 初版
出版地:台湾

