常玉は、1930年代初頭に西洋式版画を制作した唯一の中国人芸術家です。中国の書道、印鑑の篆刻、漆器の彫刻に精通していた常玉は、流れるような線描を版画に取り入れました。素材や色彩による制約がない分、常玉の版画には、彼が愛した簡潔さがより洗練された形で凝縮されています。
油絵、彫刻、素描、水彩画に続き、衣淑凡は常玉作品集の最終章となる『常玉版画全集』を発表しました。本書には、これまでほとんど目にされることのなかった42点の常玉版画が収録されています。これらの作品が持つ美しさが雄弁に語りかけ、より多くの方々が常玉の作品世界を余すところなく堪能できるよう願っています。


