もう離さない

私はこの作品を、日本の古典「安珍清姫」の物語をもとに制作しました。 この作品の元となった「安珍清姫」は、日本の古典文学や能・歌舞伎にも登場する伝説です。若き僧・安珍に裏切られた清姫が、愛と怒りのあまり蛇へと変身し、ついには安珍を焼き殺してしまうという悲劇的な物語。 「もう離さない」 というタイトルは、清姫の情熱的な愛と執念を象徴しており、観る者に強い感情を呼び起こします。清姫の執念と狂おしい愛、そして逃れられない運命を、木版画ならではの質感と色彩で表現しています。 制作の意図 この物語における清姫の感情は、愛と怒り、絶望が混ざり合った複雑なものです。 私はその感情を、絡みつく赤い紐、儚さを感じさせる手、そして象徴的な髑髏と蛇によって可視化しました。 赤い紐 … 運命の糸であり、清姫の執着と炎を表しています。 髑髏 … 安珍の逃れられなかった死の象徴。 蛇 … 清姫の怒りと変身の暗示。 特に、蛇の青色にはこだわりました。 一般的に清姫は炎を吹き出す蛇として描かれますが、私はそこに冷たい青を用いることで、彼女の孤独と執念の静けさを強調しました。 激情の果てにあるのは、燃え尽きた後の虚無かもしれない—— そんな思いを込めています。 ー この作品を手に取る方へ ー この作品は、単なる「安珍清姫」の再解釈ではなく、 執念、愛、運命の象徴としてのビジュアル表現を目指しました。 ・日本の伝統的な物語や象徴表現に惹かれる方 ・木版画の質感と、手作業ならではの個体差を楽しみたい方 ・感情や物語性のあるアートを求めている方 そんな方に、ぜひ手に取っていただけたら嬉しいです。 この一枚が、あなたの空間のどこかで、静かに物語を語り続ける存在になればと思います。 画面サイズ：27×15cm 額サイズ：41×28.4cm 素材：和紙、水彩絵具