深い藍色の釉薬は広大な海を、清らかな白磁は降り積もる雪を思わせます。この二つの茶碗はそれぞれ異なる趣を持ちながらも、共に壮大な自然の詩を奏でているようです。
一つは丸みを帯びた端正な佇まい。藍釉が碗の胴に横たわり、遠景に連なる山々のように幾重にも重なり、ちりばめられた金彩は、水面に揺らめく漁り火を彷彿とさせます。もう一つは、口縁が不揃いで、のびやかで自然な表情。藍釉の移ろいは寄せては返す潮の波のようで、濃淡が織りなす様には尽きることのない風情が宿ります。どちらの碗も、素朴な白釉を基調とし、その上に藍色の釉薬が自由に奔放に彩られています。深く濃い藍は深海の静寂を、淡く軽やかな藍は晴れた空の遠い峰々を映し出し、金褐色の窯変が点在し、歳月を重ねたような温かみを添えています。
手捏ねならではの素朴さが、一つ一つの碗に微妙な起伏や不揃いさをもたらし、この不完全さこそが唯一無二の美を形作っています。掌に包み込めば、土の温もりと釉薬の深遠な色彩を感じることができ、まるで天地を掌に収めているかのようです。単独で用いるも、二人で対で使うも、偶然と必然が織りなす造形の妙を存分に味わえるでしょう。
茶を注げば、藍と白が響き合い、天の光と雲の影が共に揺らめくかのよう。独りで静かに思索する時間にも、二人で語らうひとときにも相応しい器です。器も人も、それぞれに独自の風格を持ちながら、互いに心を通わせる知己となり得ます。
この二つの碗は、完璧な対称性を追求するのではなく、その趣が深く通じ合うことを願って作られました。不完全な美を愛でる心を持つ方との出会いを、静かに待っています。
作家紹介
陶芸家 梁世昌(リャン・シーチャン)は1957年台南生まれ。26歳で鶯歌の轆轤(ろくろ)師、翁国禎(Weng Kuo-chen)に師事し、手轆轤を学び、陶芸の世界に入りました。以来、数々の陶芸展を開催しています。釉薬の研究は深く広範で、それを巧みに操り、釉彩作品の分野で自身の限界を何度も打ち破り、見る者を唸らせる作品を生み出してきました。
1999年、梁世昌は創作活動に行き詰まりを感じ、今後の陶芸の道をどう進むべきかを見失い、創作をきっぱりと諦め、玉器鑑定の道に進みました。しかし、2021年に再び陶芸創作を再開することを決意し、2年間かけて釉薬について深く学び直し、数百枚ものサンプルを制作。これまでの作風とは異なる新たな表現を模索しました。
現在、梁世昌の作品は釉画が中心で、大自然からインスピレーションを得ています。二種類以下の釉薬、主にアート釉とセラミック釉を用いることを創作の原則としています。制作時には、まずテーマを表現できる釉薬を選び、その特性(厚み、重ね方、分離、削り出し、絞り染め、ぼかしなど)を活かして、心に描いた景色を形にしていきます。さらに、適切な位置にシンプルな線画を二筆加え、絵画の趣を際立たせてから焼成し、作品を完成させます。
釉薬の他に、土坏のひび割れた肌理(きめ)や絞り胎(しぼりたい)の紋様、天然の木の葉や鉱石などの素材も、表現の材料として用いています。
陶芸創作を再開した梁世昌は、大自然からインスピレーションを得て、釉薬と土坏の中に心象風景を描き出します。様々なアイデアが次々と湧き上がる中で、「自分が得意とする陶芸技術、釉薬の知識、そして絵画の専門性を活かして意境を表現できること、このことが私にとって大きな喜びであり、満足です。今回の再出発で、自分ならではの陶芸スタイルを確立したいと願っています」と語っています。
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