オムライスちゃん

マサオ、52歳 マサオは、何よりもオムライスが好きだった。 子供の頃から、週に一度は食べていた。 母親が作ってくれたのだ。 だから、レストランでオムライスを食べたことは一度もなかった―― オムライスは、母親の味だったのだ。 しかし、母親が亡くなってから、 彼はどうすればいいのか、よく考えていた。 ピンポーン。 誰だろう？ ピンポーン、ピンポーン。 彼はドアを開けた。 そこに立っていたのは… 人ではなかった。 オムライスちゃんだった。 「こんにちは。心の底からオムライスが食べたかったんですよね？ その願いを聞いて、やってきました。」 「さあ、このスプーンを取って、私を食べてください。」 彼女は彼にスプーンを手渡した。 「あ… ありがとう。」 マサオはオムライスちゃんを食べ始めた。 「ああ… おいしい。」 「またオムライスが食べたくなったら、また来ますね。」 「ありがとう。」 それからというもの、オムライスちゃんはほとんど毎日やってきた。 しかし、それはマサオが望んでいたことではなかった。 毎日毎日オムライスを食べることに飽きてしまったのだ。 それでもオムライスちゃんはやってきた。 ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン！！ バンバンバン！！ ドアを激しく叩く音。 ガチャン、ガチャン。誰かがドアノブを回している。 ドサッ！ 何かが郵便受けに落とされた。 音が止んだので、マサオは様子を見に行った。 郵便受けの中にはケチャップが入っていた。 ブルルル―― 彼の携帯が振動した。 LINEのメッセージ。 いつの間にか、オムライスちゃんが友達に追加されていた。 「早く食べて。」 それだけだった。 返信せずにLINEを閉じようとすると―― 早く食べて 早く食べて 早く食べて 早く食べて 早く食べて メッセージが次々と押し寄せてきた。 怖くなって、彼は携帯の電源を完全に切った。 物音がしたような気がして、振り返った。 誰もいなかった。 そう思った。 テーブルの上には―― オムライスがあった。 サイズ：高さ 67 mm